企業システム開発の現状と課題(3)


企業システム開発の現状と課題(2)より続き


次に、価格破壊により日本経済へデフレーションをもたらしたとされている、海外の安価な労働力との競争について資料を上げて考察する。

輸出入統計と市場規模は、検索した中でもっとも最近の統計である2000年のデータを使用するため、その後数値が変動している可能性がある。


輸入金額:9,189億円(パッケージ中心)

輸出金額:90億円

市場規模:13兆7,000億円

輸入・輸出額:ソフトウェア輸出入統計調査2000年実績(社団法人電子情報技術産業協会、社団法人情報サービス産業協会、社団法人 日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会

市場規模:平成13年特定サービス産業実態調査 情報サービス業(経済産業省経済産業局調査統計部)



マーケットに占める輸入金額は6.7%を占めているが、情報サービス産業の中では前掲のように、受注ソフトウェアが売上高6兆8,682億円ともっとも高い構成比(49.2%)を占める。

輸出入統計でカスタムソフトウェアの売上は、2,740億円である。ソフトウェア全体に占める輸入割合より下がって、4%を占めるに過ぎないが、コスト切り下げ要求に現れてきている。

参考:システム開発の海外流出における影響(PDF)



カスタムソフトウェア開発の海外発注(オフショア開発、オンサイト開発)の主要相手先としては、中国、韓国、インド、アメリカを上げる。

今後はベトナムに注目が集まっている。国の産業政策として力を入れているため、近い将来取引額が拡大すると思われる。

参考:2003年 コンピュータソフトウェア分野における海外取引および外国人就労等の実態(JISA,JEITA,JPSA)



海外取引にあたっての注意点としては、以下の通りである。

  • 契約条件は明確に

    日本国内の取引慣行は通じない。
  • 検収は確実に

    きちんと要求仕様を充足しているか、標準化を遵守しているかについて検収時に精査する必要がある。
  • モノの値段ほど安くない

    安価な労働力を使用できる工場と違い、ソフトウェア産業は一定レベル以上のスキルを必要とするため、工業製品ほどの価格格差はない。
    あくまで高度な能力を持つ技術者を多数確保するためと考えていた方が良い。


今後の企業システム開発において、情報技術は今後一層、多様化、高度化するため、情報処理技術者は「広く浅く」か「深く狭くか」の選択を迫られることになる。



有り体に言えば、各々の個人能力が問われることになる。高度なスキルを必要としない仕事はオフショア開発へ流れ、価格だけの競争となる。

スキルのある技術者には、需要もあり多額の報酬を受ける事ができるが、そうでない技術者にはキビシイことになる。(ITプライスデータバンク−SEプライス


さて、同業諸氏の皆さん、日々精進あるのみです。がんばりましょう。



参考:ソフト業界はやっぱり生活がハード?−「時間の使い方」実態調査より([休日の過ごし方]10人に1人が休日も熱心に勉強)

(この項終了)