日本・ハワイ連邦
空想歴史小説という分野がある。
織田信長が本能寺で死ななかった場合とか、太平洋戦争で日本が別の戦略を進めた場合などをテーマにしている。
歴史マニア、戦史マニアである作者が真剣にストーリーを練っているため、それなりに面白い。
しかし歴史に「もし」はない。
どんな結果になろうが、決断した、あるいは決断しなかったことで、その後が決まり、現在とつながっている。
しかしそれでも、「もし」が歴史マニアを惹き付けるのは、現在と違った歴史になっていたかもしれないという知的遊戯である。
それほど大きく変わらなかったであろうという「もし」もあるが、実現していたらどうなっていただろうと想像力を羽ばたかせることができる「もし」もある。
今回紹介する「もし」は、日本とハワイが連邦となっていたらどうなっていただろうということ。
幻に終わった日本・ハワイ連邦構想
明治14(1881)年3月、世界一周旅行の途次、ハワイ国王カラカウア1世が来日、赤坂離宮で明治天皇と会談しました。ちなみに、日本を訪れた外国の国家元首はこのカラカウア王が最初です。この時、赤坂離宮で両国首脳が会談した内容こそが、今回の最大のテーマなのです。この席で、カラカウア王は明治天皇に対して、次のような提案をしています。
1.カラカウア王の姪で王位継承者のカイウラニ王女と、山階宮定麿親王(後の東伏見宮依仁親王)との縁組。
2.日本・ハワイの合邦(連邦)。
3.日本・ハワイ間の海底電線(ケーブル)敷設。
4.日本主導による「アジア連邦」の実現。
ハワイが存続して日本の友邦であったなら、アメリカがアジアに進出することもなかったであろう。
逆に日本がポリネシアに影響力を強めて、ミクロネシアだけでなく、太平洋全域に海洋国としての権益を確立することに国力を費やした可能性がある。
その場合、日米開戦の切っ掛けとなった、アメリカの資源封鎖はおこなわれなかっただろうか、それとも逆に早まっていただろうか。
仮に太平洋に覇権を確立することを優先していた場合、中国大陸と2方面作戦を展開する余力はなくなるので、第二次世界大戦も大きく様相を変えることになるだろう。
そうなった場合、歴史的にはどうでもいいことであるが、僕の祖父は軍人であり東京へ居を移そうとしていたので、転居していた可能性が高くなる。
そうすると、父も東京で育つことになり、祖父のように軍人となるかもしれないので、僕の母である近在の娘と結婚することもないだろう。
つまり僕が生まれてくる可能性は、ゼロに近くなる。
そうならなかったから、僕がいるワケなんですが。
しかし、太平洋に広く覇権を持ち、広大な領海を持つ日本というイメージは、知的好奇心をいたく刺激する。
あまり資源は無さそうなので相当厳しいだろうが、それでもあの敗戦はなかっただろう。
日本・ハワイ連邦が実現していた場合、世界はどう様相を変えていただろうか。
共産中国はなかったかもしれないし、朝鮮半島の分断もおこらなかったかもしれない。
こうして想像することで、現在の世界情勢を離れて別の角度から眺めることができれば、それもまた面白い。