ウェブ進化論
話題の「ウェブ進化論」を読みました。
著者の梅田さんは、ニュースサイトでコラムを毎日更新していたこともあり、IT業界では著名人です。
内容は梅田さんがコラムや講演で話していたことの集大成です。僕はコラムのROMだったので、「これは読んだことあるな」という論評が多かったのですが、十分に刺激的でした。
結論から言うと意欲あるビジネスパーソンには「まあ読め」です。
扱っている話題が旬のものなので、たぶん1年後には陳腐化する部分もあるかと思いますが、確実に日本社会を変えるであろう名書です。
しかし、WEB2.0というキーワードで語られる変化は、僕の現在の生業であるビジネスシステム構築にとっては、あまり影響がないかと思います。
例えばAjaxで原価管理システムを構築したからといって、意味があるとは思えないからです。
しかし、ひょっとしたらそれは僕が柔軟性を失っているせいかも知れません。
かつてコンピュータシステムはメーカーのものでした。
現在から比べれば遙かに高価だったパソコンよりもずっと高くつく端末や、信じられないくらいに月間使用料が高い汎用機を使用してビジネスシステムを構築していたのですが、UNIXやWindowsを見て、変革の兆しを感じて、いち早く汎用機の技術を捨てることができました。
しかしそれは、僕がまだ若く、旧来の技術に対してそれほど投資していなかったせいもあるかも知れません。
自らの生業に対しての危機感を感じないのは、梅田さんがいう「あちら側」の台頭に対して鈍感になっている懸念があります。
さて、インターネット技術の普及と洗練によって、これまでとは違ったビジネスルールが発生しています。
もっとも端的なのは、ロングテールという概念です。
ロングテールとは、情報技術とインターネットにより、パレートの法則が適用されない領域が誕生したと言うことを意味します。
例えば、アマゾンは全売上の三分の一以上を十三万位以降の本から上げているそうです。
僕がロングテールを実感したのは、日本でiTMSが始まったときです。
愛のメモリーがランキング上位に掲載され、2ちゃんねるでダウンロードランキング1位にしようと呼びかける書き込みで盛り上がりました。
松崎しげるのアスキーアートを使って「ガハハ。早く買わないと売り切れてしまうぞ!」との書き込みの後、「売り切れるわけないじゃん」という返答を見て、「あ、これがロングテールなんだ」と実感し、あまりの変化に戦慄しました。
これまでもそうであったように、今後も人類文明は変化していきますが、インターネットの普及は変化をもたらす大きな要因になるでしょう。
そしてどう変わっていくかは、誰かが決めることではなく、多少なりとも僕らが関わることによって変わっていくのだと思います。