方法序説


方法序説
哲学だけでなく、近代科学文明の源流である本書は、その名声と表題に比べるとあっさりと読めてしまう。

全体を通して控えめであり、謙虚な文体には好感が持てる。

大哲学者としてのデカルトでなく、数学に才能を発揮し、決闘に強く、女たらしで、博打で生活していたデカルトを出発点とすると親しみを持って読める。

気に入った箇所をピックアップしてみる。

『けれども旅にあまり多く時間を費やすと、しまいに自分の国で異邦人になってしまう。』

『「必然を徳とする」ことによって、病気でいるのに健康でありたいとか、牢獄にいるのに自由になりたいなどと望まなくなる。』

『「わたしは考える、ゆえにわたしは存在する[ワレ惟ウ、故ニワレ在リ]」というこの真理は、懐疑論者たちのどんな途方もない想定といえども揺るがし得ないほど堅固で確実なのを認め、この真理を、求めていた哲学の第一原理として、ためらうことなく受け入れられる、と判断した。』

『ワレ惟ウ、故ニワレ在リ』に続いて、自己があるかどうかが人間とそれ以外を分けると説くが、現代のAIや人工痴脳(「うずら」など)を見たら、デカルトはどう言うだろうか。