独占は悪いことばかりでない


会議や打合せで人のやっていることにケチを付けていかにも頭が良さそうに見えるが、自分では決してやらない人がいる。そういう人には「文句があるならおまえがやれ」と言いたくなる。



「MSの独占がセキュリティを脅かす」――業界団体が報告


Microsoftに対して批判的なコンピュータ業界団体が9月24日、同社が重要な技術を支配していることが、米国のインフラに脅威を与えていると主張する報告書を発表した。

こうして自宅からblogを書けるのも、遠くに住んでいる友人とメールを交換したり、デジカメで撮った画像を送りつけたりできるのも、コンピュータが普及しているお陰であり、こうしたインフラを作る上での最大の功績はマイクロソフトのものだ。

自動車のハンドルやブレーキ、アクセルの位置や操作方法が各々の車種によって違うとしたら、自動車は未だに一部マニアのものだろう。同様に大企業やマニアのものであったコンピュータをみんなのものにしていく過程で、インストール方法や規格の統一、操作方法の一貫性を確保することは重要であった。

Windows XP Professional SP1

マイクロソフトに対して様々な批判があるが、それはあくまでマイクロソフトの功績を認めた上で、「もっとこうして欲しい」「こんなことを意識して欲しい」との助言である。商売敵からの発言は割り引いて考えるべきだし、考えが違うエンジニアや思想家からの意見は、多様性の一環としてとらえるべきである。技術的にはベスト製品ばかりではないが、ビジネスについて非常に遣り手で商売上手である。そんなところが、やっかみを買っている面がある。

独占の弊害はあるが、ここまでコンピュータ技術を普及させ、生産性向上とコミュニケーションチャネルの多様性を実現する過程でマイクロソフトが果たした功績は非常に大きい。

それを昨日や今日コンピュータを使い始めたばかりのやつが、どこかで読んだようなことでマイクロソフトの悪口を言うのを聞くと呆れてしまう。

ただし、マイクロソフトの収益源はWindowsOSとOffice製品のアップグレードに依存しており、そのため、OS自体の機能はどんどん肥大化する傾向にある。

かつて、TCP/IPスタックはマイクロソフトOSには標準で添付しておらず、インストール後にスタックをインストールする必要があった。設定にあたってはconfig.sysやautoexec.batでのロード順を変えたり、各々のコマンドのパラメータをチューニングしてコンベンショナルメモリ領域を空けることに四苦八苦した。TCP/IPスタックを最初に標準添付したのはWindows95であったが、それまで苦労してネットワークを設定したのが嘘のように簡単にできるようになった。しかしその後、TCP/IPスタックを製造販売していたベンダーは市場から消えてしまった。

今後もマイクロソフトが成長していく過程で、色々な機能を取り込んで行き、それに伴い他のソフト会社が売っていた機能を取り込んでいくだろう。ちょっと便利に使うための小さなソフトウェアを提供しているところが、消えていくのは古くからのユーザーとしては寂しさを感じる。

ところが最近はアップグレードしても、それほど機能の向上がなくメリットが少ないので、ユーザーはアップグレードを躊躇する傾向にある。そのためマイクロソフトは期限付きのアップグレード権利のソフトウェアアシュランスとセットにして製品を売り込もうとしており、従来の売り切り型から使用料を徴収する方向に転換しようとしている。

だが、機能の付加には限度があり、無限に続ける訳にはいかない。ソフトウェアの進化が鈍化した時にマイクロソフトはどうするのか。近い将来にマイクロソフトがメジャープレイヤーとしての役割を終える時、コンピュータはどんなになっているだろう。それを想像するとワクワクする。