恋愛の科学


科学はいろんな迷信を論理的に説明してきました。

最近また一つ迷信が科学的に分析されて長年の謎が解けました。


「愛は麻薬」。

流行歌の歌詞に出てきそうな言葉が科学的にも立証された。恋に落ちると麻薬を服用したように体が反応し、中毒性もあると、英BBC放送電子版が薬物中毒専門心理学者の話を引用して25日報じた。

英心理学者マルスデン博士は「人を愛すると、コカインを吸入したときのように、脳から覚せい効果を持った神経伝達物質ドーパミンが分泌され、心臓の拍動が普段の3倍ほど速くなる」と述べた。 またこうした興奮状態は中毒性まであり「恋に落ちた感情は麻薬のように、ずっとその感じを渇求するようになり、なくなれば禁断症状まで現れる」と指摘した。

マルスデン博士は「コカインの場合こうした症状が一時的だが、愛の場合は普通3〜7年間持続するという点が異なる」と付け加えた。


恋愛すると脳内麻薬のドーパミンが分泌されるそうです。(男女はなぜ結びつくのか?

好きな人のことを考えると切なくなったり、逢うとドキドキしたり、離れると辛かったりするのはそのためです。

人間の心とか感情は、科学では割り切れないものとして不可触の領域だったのですが、最近はどんどん分析されて、所詮ホルモンバランスや脳内伝達物質の産物だということが分かってきました。

母性本能にしても、生まれたばかりの哺乳類は保護欲をそそるようにできているそうです。

身も蓋もありませんね。理系が嫌われるわけです。


恋愛に科学を持ち込んだお話としては、ジョン・ヴァーリィの短編「ブルーシャンパン」が秀逸です。ヴァーリィだけの短編集もあるのですが、僕の手持ちの中では、新潮文庫から出ていた「宇宙SFコレクション(2) スターシップ」が一番です。他にもアシモフの最高傑作として名高い「夜来たる。」も収録されています。

すでに絶版ですが、古本屋で見つけたら何をおいても購入して一読下さい。


主人公クーパーはかつてオリンピックの水泳選手でしたが、今は引退して地球軌道上にある高級娯楽施設にあるプールで救助員として働いています。

そのプールにトップ女優であるメガンがやってきます。女優といっても現在の映像と音声だけのメディアではなく、五感や気持ちなどを記録して疑似体験することが可能となっています。この辺がSFですね。

彼女は事故のため首から下はほとんど感覚が無く、「黄金のジプシー」と呼ばれている世界に一つしかない高価な人工骨格を装着することで日常生活を送っています。

聡明ではあったが、他人とあまり交流をしてなかったクーパーがメガンと交流することによって深い人間性を獲得していきます。

メガンの全てを受け入れて二人は恋するようになり、奇蹟的に恋に落ちる瞬間を記録することに成功します。それは素晴らしいもので、これは自分たちだけのものにしようと誓います。

ところがメガンは女優としては頂点を過ぎており、莫大な値段の「黄金のジプシー」を使い続けるためには、その記録を売るしかなかったのです。

クーパーを裏切ったメガンは、クーパーの元から去ってしまい、クーパーは絶望します。

ずっと後になってからクーパーは、メガンが記録した恋に落ちる瞬間を体験してみます。


彼の憎しみは急速に消えていった。心の傷が癒えるにはもっと長くかかったが、とうとうある日、彼女を許せる気持ちになった。


かつて愛し合った者が別れる時は、どちらかから別れを切り出すことになります。

別れを告げられた彼は、まだ彼女のことを愛しています。

深く愛しているほど、ドーパミンは大量に分泌されており、その禁断症状で彼は錯乱します。彼女に付きまとい、拒絶されることで絶望し、やがて行き場のない感情を持て余して、彼女に対しての愛を抱いたまま、同時に憎むようになるでしょう。

感情の嵐に翻弄され、長い間苦しんだ彼は、やがてドーパミンの禁断症状が切れて、落ち着くことになります。

次の恋をする時は、耐性が出来ているので、あんなに激しく懊悩することはないでしょう。もう少年のような恋は出来ないのです。