ベトナムの昔話


ベトナムの昔話」という本を読みました。引用しながら感想をエントリします。



そのころ、殷の侵略軍がこの国を占領していました。

殷の賊どもはこの上なく残忍で、その首領の殷王は恐ろしい野獣のような顔をしていました。

彼らは行く先々で、家を壊し、人を殺し、財産を奪って暴れまわりました。(天の大将軍ゾン)

そのころ、中国の明がベトナムを侵略し支配していました。明軍は、ベトナム人民をまるで塵(ちり)か芥(あくた)のようにあつかい、むごたらしく殺していたので、人びとの明に対する怒りは頂点に達していました。(還剣湖)

むかし、むかし、それはいつの時代かははっきりしません。国内は乱れて騒然とし、各地に盗賊が横行し、また国王の兵士たちも略奪、暴行をほしいままにして、人びとを苦しめていました。(ほととぎす)


ベトナムの昔話
ベトナムは洪水、旱魃(かんばつ)、台風などの自然災害に遭うことも多かったと聞きます。

また、島国であることから他民族の侵略を受けることが少なかった日本と違い、東南アジアで地理上重要な位置にあったため、侵略の脅威にさらされてきました。

特に中国の侵略を受けることが多く、昔話にも残っています。隣国はどこでも同じだと思いますが、ベトナムと中国が友好関係を結ぶことは難しいのではないでしょうか。

現代でもフランスの植民地として支配されたり、その後も独立する際にアメリカからの干渉を受けて戦争を仕掛けられています。



そのせいか、本書で取り上げられている昔話は単純な勧善懲悪だけでなく、正直者が損をする話や、愚鈍な夫の話などやり切れない結末のものがあり、ベトナム民衆のシニカルな視点を感じます。


考えるとベトナムは世界で唯一アメリカに勝った国です。

その際にベトナムで中心となったのはホーチミンです。今でもベトナムの方は外国の者から「ホーチミン」と呼び捨てにされると怒るそうです。ベトナムの方は今でも「パクホー(ホー小父さん)」と呼んで慕っているそうです。


数年たって、弟を追い出した兄は、弟が八面太鼓を手に入れて豊かに暮らしていることを人のうわさで知りました。欲ばりの兄は、力ずくで八面太鼓を奪いとろうと思いました。兄はならず者をあつめておしよせて来ました。(弟は)村の人たちと力をあわせて盗賊どもをひとり残らずやっつけました。

この弟の才知を知った村の人たちは、国王にしようとしましたが、彼はことわりました。

「わたしは、国王になんかなりたくない。みんなといっしょに、ここで畑を耕して暮らしていきたい」(八面太鼓)


パクホーに通じるものを感じますね。1月末にはこのベトナムへ行きます。今から楽しみです。