武士道


武士道―サムライはなぜ、これほど強い精神力をもてたのか?
現在の5,000円札でようやく全国的に有名になった新渡戸稲造の代表作です。

公開中の映画「ラスト・サムライ」で主演のトム・クルーズがサムライのことを知るために読んだと言ったため一躍脚光を浴びています。


ごめん、トム。これもっともらしいけど、一部の上澄みだけを取り上げて、あたかも日本の武士階級全員がそうであったかのように書いているんだ。君の国の歴史がそうであるように、一部の突出した変人だけが歴史に残り、大多数は存在しなかったかのように消えてしまうんだよ。

新渡戸稲造確信犯なんだ。確かに新渡戸稲造のお祖父さんは南部藩の上級武士だったけど、勘定方で理財に長けた人だったらしい。新渡戸は英語が堪能だったことから、当時としては最先端のハイカラな家風だったんだろうね。だから彼が武士としての教育を受けたことはないと思うよ。

序文で本人が書いているように、この本はアメリカ人の奥さんなど外国人に向かって日本人の素晴らしさを誇るための本なんだ。だってそのために新渡戸はわざわざ英語で書いたのだからね。実は本人は日本語に直してさえいないんだ。君が読んで感動してくれて、墓の下の新渡戸は喜んでいると思う。

だまされたからといって怒らないでくれ。明治の日本人は強大な外国に向かって日本を誇示する必要があったんだ。鴎外−ナウマン論争を知っているだろう?

ものすごく引用が多く、本自体にも権威があるので、雑学のネタ本としては最適だな。その意味では良い本だと思う。

日本人なら、外国へ渡航する際に一読して使えそうなところを丸暗記して行くと良いかな。そうすれば、日本人の素晴らしさについてちゃんと誇ることができる。(しかも英語で。ありがとう新渡戸先生。)

ただ本当にあったことのように話すと、底が知れてしまうから「『こんな素晴らしい武士道が日本にあった』と新渡戸先生は言った。」ぐらいにしておいた方が無難かな。

もし自己啓発のために読書するなら、新渡戸と札幌農学校で同期だった内村鑑三や新5,000円札になる樋口一葉の本を読んだ方が良いと思うよ。じゃまた。