カラシニコフ


カラシニコフ
朝日新聞に連載していた「カラシニコフ」が単行本になったので購入、読了しました。

連載中から興味深く読んでいました。

民衆を殺し、国家を崩壊させ、子供達の未来を奪う紛争地域。そこには必ずカラシニコフという小銃があります。

略称は「AK47」アフタマートカラシニコフ47、カラシニコフ自動小銃1947年製のことです。

冒頭、シェラレオネという国が出てきます。国と書きましたが、国としての体を成していません。

WHOによれば平均寿命は、男32.4歳、女35.7歳。

CIAのWorld fact bookによれば、平均年齢は17歳。

ちなみに日本の平均寿命は、男78.4歳、女85.3歳。日本の半分以下。僕の年齢より下です。

ダイヤモンドが算出するために、その富を巡って争いが絶えません。

独裁者は、身内で富を独占してしまい、国は貧しいままです。

人口一人あたりのGDPは、606ドル。日本は、26,652ドル。2.3%以下です。

日本と比べるのがいけないのでしょうか。


最初に登場した少女が反政府ゲリラとは名ばかりの盗賊にさらわれ、戦闘員兼ボス専用の女にさせられたのは、11歳の時。

今年12歳になる娘を持つ父親としては、滂沱と涙するしかありません。

 近代になるまでは、戦争は専門職のものでした。刀、槍、弓など特殊技能を持つものが騎士・武士や傭兵として戦争してきたのです。

ところが、銃の発明により、誰でも一定の訓練を積めば兵士として戦闘に参加することができるようになりました。兵士の大衆化です。

20世紀に入り、自動小銃の出現により、少年少女などの未成熟な者でも扱えるようになり、武力を持つことへの敷居が一気に下がってしまいました。

ロシアで開発されたカラシニコフは、その扱いやすさで人気を集め、冷戦下で紛争地域へ大量に輸出されます。

時として、兵士を上回る数のカラシニコフ流入したのです。

冷戦が終結したことで、タガが外れ、紛争が始まった時、そこにはタフで扱いやすいカラシニコフがありました。

そうして兵士とは言えない夜盗が地域社会を壊していったのです。


さて、日本の方針であった武器輸出三原則が見直されるようです。

武器輸出により生産量が増え、効率を高めることになるでしょう。

日本の技術を同盟国に供与することで、安全性も向上するでしょう。

しかし、武器を輸出することで、他の地域に紛争が起きる可能性を高めているのです。

理念だけで安全が保証されると言うほど甘くはないでしょうが、日本の安全保障を確保することが、他の地域の危険度を高めることになることになっては、日本の国是である平和主義に反していないでしょうか。

力無き正義は滅びますが、理念なき覇権は危ういです。

同盟国との連帯を強めることについては賛成しますが、大きく方針を転換しようとすることについては、慎重であるべきだと思います。


本書では、最後の章で紛争が続くソマリアに見切りを付けて、独立したソマリランドが取り上げられています。

広く地域に行き渡ってしまった武器を回収して、安心して暮らせる社会を創ろうとしています。

こういうところにODAを使うべきだと思います。