ローマ人の物語?? 最後の努力


最後の努力
塩野七生氏が毎年一巻ずつを刊行されている「ローマ人の物語」の最新刊が刊行されました。

もちろん購入し読了しました。今回も面白かったです。

毎年一巻ずつ刊行されるのですが、もう13巻目になります。

最初に刊行された翌年に産まれた娘が来年は中学生です。早いものです。


今回は、ローマ帝政後期が対象になります。

強力な防衛線を作り上げ、蛮族の侵入をほとんど許さなかったローマ帝国ですが、国力の衰微により侵入が頻発するようになります。

その対策としてディオクレティアヌスが進めた改革により、ローマ帝国はその特色を失うことになりました。

それまでのローマ皇帝は強大な権力を手にしていましたが、チェック機能は有効に働いていました。

しかしこの時期より絶対君主制が確立されます。

特にディオクレティアヌス退位後の戦乱を勝ち上がってきたコンスタンティヌスによって、その路線はより強力に進められることになります。

コンスタンティヌスは、キリスト教に多大な援助を与えたことから、今日でも「大帝」と呼ばれています。

コンスタンティノープル、現在のイスタンブールを新都として建設したことでも有名です。

絶対君主制の確立にあたっては、大きな功績があったのですが、どうも好きになれません。



卓越した軍事能力があったわけではなく、共同体のために改革をしたわけではありません。

相対的に優位を占めて泥試合に勝利を納めただけであり、自らの立場を強化するために権力を濫用しただけです。



軍事的な才能があり自分が権力を確立する際に功績のあった息子を、後妻との不義の嫌疑をかけ拷問の後に死刑にします。

殺した息子、クリスプスは、政略結婚のために離縁した前妻との間の息子なのです。

コンスタンティヌスの父も皇帝として指名される際に、政略結婚して妻を離縁しているのですが、彼も前妻の息子であり、クリスプスと同じ境遇にあったはずなのにです。

その後に不義の嫌疑をかけた妻も浴室で熱湯に浸けて殺しています。

人情味のかけらもありません。胸が悪くなります。



キリスト教を支援したことだって、信仰心があったわけではなく、絶対君主制を確立する上で有効だったからです。

権力者として栄華を極めて衰微の兆しがないままで死去するのですが、それで何を遺したのでしょうか。

コンスタンティヌスの後は、愛読書の一つ「背教者ユリアヌス」の主人公であるユリアヌスが登場します。

ユリアヌスは将来を嘱望されていながら夭折した青年皇帝です。堂々とした一生を送っています。

また来年に14巻目が刊行されるのが楽しみです。