共産党宣言


マルクス・エンゲルス 共産党宣言
毎月参加している読書会の次回課題本です。

共産主義者を一言で貶すものとして、「20歳までに共産主義に傾倒しない人間は情熱が足りない。20歳を過ぎて共産主義に傾倒する人間は知恵が足りない。」という一句があります。世間では、ウィンストン・チャーチルの言葉とされているものですが、どうやら創作のようです。

東欧とソ連邦崩壊以降、共産主義自体が廃れているなか、なぜこの本が課題本になるのかと疑問を持ちながら読みました。


『ヨーロッパに幽霊がでる。−共産主義という幽霊である。』のあまりに有名な一句から始まり、『万国のプロレタリア団結せよ!』で終わる51ページしかない短い文章です。

観念としての共産主義は分からないでもないのですが、終始、上からものをいうような論調に辟易しながら読了しました。


しかし、書かれて以来、150年の長きに渡って読み継がれているだけのことはあり、言葉に力があります。


ブルジョア的生産ならびに交通諸関係、ブルジョア的所有諸関係、かくも巨大な生産手段や交通手段を魔法で呼び出した近代ブルジョア社会は、自分が呼び出した地下の悪魔をもう使いこなせなくなった魔法使いに似ている。

支配階級よ、共産主義革命の前におののくがいい。プロレタリアは、革命において鎖のほか失うべきものをもたない。かれらが獲得するものは世界である。


しかし現実には共産主義革命は、資本主義が発達した西欧やアメリカではなく、ロシアや中国で国家を樹立することに成功しました。

ロシアや中国の支援を受けて共産主義者が独裁を確立するのは、キューバベトナムなどの圧政に苦しむところでした。



以前、革命家として名高いチェ・ゲバラについての本を何冊か読んだことがあります。アルゼンチンの裕福な家に生まれた医学生であったゲバラが革命家になったのは、中南米での貧困の現実を見知ったからであり、豊かな資源を持つ中南米を搾取するアメリカ合衆国の影響力を排除したかったからです。



また、ベトナムについての本を読んだ限りでは、国父ホーチミンは、民衆に苛政を布いていたフランス、アメリカの傀儡政権を倒したかったのであって、共産主義ありきで始まった反乱ではなかったようです。



共産主義革命が起こった国では、民衆が望んで共産主義を採用したわけではなく、現在の体制を改革するための手段として共産主義を採用するのではないでしょうか。

資本主義が虎狼のような側面を見せる際に、対抗勢力として共産主義が重用されるのではないかと思います。



「もっとも成功した共産主義」と揶揄される日本ですが、最近では収入に格差が広がり、階級社会化が進展しているのではないかとの指摘があります。

ジニ係数を見る限りでは、それほど他国と比較して格差があるわけではないのですが、これまで均質化していただけに、格差が発生すると大きく見えてしまうものなのかも知れません。



今後、共産主義が注目されるとしたら、資本主義がその悪い側面を出しすぎたことによる警鐘として考えるべきかと思います。

参考:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-09-27/2005092705_01_2.html