方丈記
今月の読書会の課題本は「方丈記」。
『ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。』
書は出だしと結語がすべてだという評価からすれば、凄まじい名作です。
受験対策として著名な箇所は読んだことはありましたが、不惑を越えて、通して読むと、こんなに素晴らしい書だったのかと感嘆します。
出だしから無常観の基調があり、平清盛による福原遷都のくだりや地震、竜巻、旱害の有様が痛々しいほどのリアリティで記述され、平安末期の閉塞感を良く伝えています。
現実社会の酷さを思い知った後に、共産党宣言のような檄文を書いて世に問うのか、ひっそりと隠棲して心の平穏を願うのか、あまりに真逆の反応に考え込んでます。
いずれにしろ、社会の矛盾を目の当たりにして、深く感じ入る気持ちがないと、どちらの文も書くことができないのだと思います。
「だってしょうがないだろ」程度の反応しかできない自らを省みると、マルクスの激しい怒りや鴨長明の繊細な感受性の素晴らしさが身に沁みます。