人形の家(イプセン)
小鳥のように愛され、平和な生活を送っている弁護士の妻ノラには秘密があった。夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたのだ。秘密を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラをののしる。事件は解決し、夫は再びノラの意を迎えようとするが、人形のように生きるより人間として生きたいと願うノラは三人の子供も捨てて家を出る。
想像力を駆り立てる簡潔な表現に惹かれて戯曲ばかり読んでいた時期がある。まだ20歳ぐらいだった。その頃に本書を読んだことがあり、女性の自立がテーマだと聞いていたので、読後感はへぇという程度だった。
その後、幾度かの恋愛を経て結婚し、様々な経験を積んでから再読すると、別の観点からの感想を持ってしまう。
夫ヘルメルは、一時の激情からノラをののしったことにより、ノラに幻滅されて捨てられてしまうのだが、結婚して子供が三人いるような年齢になるまで、人間関係で失敗したことはなかったのだろうか。
身内や部下が失敗したことを言ってきたときに、口汚く罵っても問題が解決することはない。感情にまかせて怒ったところで自分がイヤになるだけだ。
落ち度があることは本人が一番よく知っている。さらに追い打ちをかけることで統制するやり方は好きじゃない。
目をつむり、ゆっくりと息をして、口元に笑みを浮かべよう。
そして解決に向けて調整し、指示を与えた後、報告してきた勇気をほめよう。
時には激情が湧き上がる時はあるけど、僕はそういう対応する人の方が好きだし、自分でそういう対応ができた時は嬉しい。できれば常にそういった穏やかな態度を取りたいと願う。
人はそう簡単に変われるものではないけれど、変われる可能性を持っている以上、自分がなりたいと思ったように変わっていくことはできると思う。そしてその自分の可能性を信じたいと願う。