秀吉の枷
「秀吉の枷」を読みました。
前作「信長の棺」を読んだ方には「枷」が何のことか分かるのですが、それを知りながら、その時に向けて読み進めるのは楽しかったです。上下巻で740ページを一気に読んでしまいました。
上巻は秀吉が権力を奪取する過程がテンポ良く記述されていて楽しく読めました。
夭折した軍師、竹中半兵衛の励ましを抱いて、崇拝と恐怖の対象であった信長を超えようとする箇所は、読んでいて爽快でした。
ところが、後半「枷」にはまった秀吉が生彩を欠いていくのは読んでいて辛かったです。
どうしようもなく避けがたい宿命の中で、精いっぱい足掻く秀吉は、これまで読んだことがない秀吉像が提示されて新鮮でしたね。
週刊文春に載っていた作者インタビューによれば、本作は信長の遺体をめぐる3部作の第2部であり、最終作は明智左馬助だそうです。
本作でも左馬助の辞世の詩として五言律詩が上げられています。
一戦国中生 未知風月情
朝出師望魁 夕地策運営
依几臥竜術 横鉾千里行
幾英明如夢 終節帰清明
ナカナカ味がありますね。自作が楽しみです。