見える化


見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み
話題の「見える化」を読みました。

トヨタかんばん方式」を生産部門だけでなく、営業部門や管理部門、経営層にも適用して、「強い企業」をつくろうとの提言です。


前半の総論部分は非常に興味深く読みました。

後半には事例紹介が続くので、ちょっとだれる箇所もありましたが、紹介された各社の事例(特にトヨタ)は、自分の仕事でも使えるところがあります。


見える化」の基本は、相手の意思にかかわらず、さまざまな事実や問題が「目に飛び込んでくる」状態をつくり出すことである。


プルしなければいけない掲示板ではなく、メッセージはプッシュしないといけないです。

勤務先ではグループウェアが導入されていますが、あまり活用されているとは言えない状況です。

未読件数しか表示されないと、何回かは読んでみて、大した内容が更新されないと、がっかり感が蓄積していき、やがて読まなくなり、未読件数が溜まる一方になってしまいました。

本書では「見える化=IT化」ではないと力説しています。


多くの場合がIT(情報技術)に過度に依存した仕組みになっていて、自然と目に飛び込んでくる「見える化」ではなく、人間の意思を前提にした「見る化」で終わってしまっている。



見える化」とは「見せる化」であり、「見せよう」という意思と知恵がなければ、「見える化」は実現できないのである。



ITによる「見える化」の多くは、「見てくれるはず」という甘い期待を前提にした仕組みである場合が多い。

さらに、ITは「感情」を伝えることは不得手である。


齋藤孝さんの「コミュニケーションとは『意味』と『感情』のやりとり」との定義を引用し、『見える化においても重要なのは、「感情の見える化」を工夫することである。』の箇所は、秀逸な指摘です。



確かに、気心がしれた相手でないとメールや掲示板でコミュニケーションを取るのは難しいです。

情報伝達程度に留めておいた方が無難ですね。



よく行くお寿司屋さんには壁にメニューの短冊が貼ってあります。それはワープロで作成したものではなく、筆を使って下手な字を書いたもので、一品一品コメントやイラストが添えられています。

「地元のフグは夏が旬!」などと書かれていると、やっぱり注文してしまいます。

また、「見える化」することのメリットとして、現場による自主的な改善が実行されることを挙げています。


人間には本来、自律的に物事を判断し、適切な行動をとるという能力が備わっている。事実が顕在化し、問題が明らかになれば、誰かに言われなくても必要なアクションをとって対策を講じるという自律的・能動的な特性を持っているのである。


しかし、出る杭は打たれますからねぇ。アクションを起こす前に、入念な瀬踏みと根回しが必要です。

そうでないと、誰も動いてくれずに浮き上がることになってしまいます。


先日、某所で事例発表をすることになってしまい、100人以上の経営幹部の前でプレゼンしました。

「ソフトウェア開発での品質向上」というお題が与えられたのですが、日々のバックログを消化することで手一杯ですので、内容については自分でも不満が残りました。

最近はプレゼン慣れしてきたので、そこそこ受けは取れましたが、他の方の事例発表に比べると「プレゼン」止まりでした。

特に製造業の関連会社であるソフトハウスの方の発表は、本書で上げられていたような、問題の「見える化」をおこなっており、プレゼンテーターでありながら、メモを取ってしまいました。

ちょっと悔しかったので「資料を下さい」とは言えませんでしたが。(ちっちぇw)


本書を参考にして、仕事で「見える化」に取り組んでみようかと考えています。